生成AIで作る特性要因図|4Mで原因候補を整理
生成AIで特性要因図の下書きを作る手順を、架空の梱包作業で解説。4Mへの分類、事実と仮説の区別、図への配置、現場で確かめる質問まで紹介します。福島県の製造業の品質管理・改善担当者向けです。
梱包のやり直しが発生したとき、最初に思い付いた原因だけで対策を決めていないでしょうか。生成AIには、現場の記録と担当者が挙げた候補を渡し、人・設備・材料・方法の観点で整理する作業を任せられます。そこで使うのが、結果と要因の関係を魚の骨のように並べる「特性要因図」です。
この記事では、福島県の製造業で品質管理や改善活動を担当する方向けに、特性要因図の下書きと、確認すべきことの一覧を作る手順を提案します。図に載った候補は、原因として確認できたものとは限りません。AIに分類を手伝ってもらい、現場の担当者が記録や現物で確かめるところまでを一組にします。
特性要因図は、結果に関係しそうな要因を広げて整理する図
日本品質管理学会の品質管理用語「17.3 特性要因図」では、結果とそれに影響すると考えられる要因を魚の骨の形にまとめ、原因の仮説を議論するための道具として説明しています。
右端に置く「特性」は、今回調べる結果です。たとえば「品質が悪い」では範囲が広すぎます。「梱包後の確認で封かんの浮きが見つかった」のように、何が起きたかを具体的にします。
大きな枝には要因を探す観点、小さな枝には具体的な候補を置きます。今回の練習では、人・設備・材料・方法の四つの観点(4M)を大きな枝に使います。
| 4Mの観点 | 今回の梱包作業で確かめる対象の例 |
|---|---|
| 人(Man) | 作業の説明、交代時の引き継ぎ、確認の分担 |
| 設備(Machine) | 使用した器具、設定、点検の記録 |
| 材料(Material) | 箱やテープの種類、保管状態 |
| 方法(Method) | 貼る位置、押さえ方、確認の手順 |
この表の右列は、編集部が考えた確認観点です。実際の不具合の原因や、特定の製品の取扱方法を示してはいません。工程によっては環境や測定の観点を加え、4分類に無理に収めないようにします。
既存のなぜなぜ分析の記事では、人が挙げた仮説のつながりを確かめる方法を扱っています。今回は、その前段として複数の観点へ候補を広げ、調べる範囲をそろえることに重点を置きます。
AIへ渡す前に、起きた結果と原因候補を分ける
「封かんの浮きの原因を教えて」とだけ入力すると、自社で起きたことと一般的な可能性が混ざります。まず、確認できた結果、記録がない事項、人が挙げた候補を別々に書いてください。
次の例は、実在する企業や製品に関係のない練習用の設定です。数字や候補も編集部が作成しています。
| ID | 練習用の材料 |
|---|---|
| F1 | ある日の梱包後確認で、20箱のうち3箱に封かんの浮きが見つかった |
| F2 | 20箱は同じ型番の箱と同じ種類のテープを使用した。材料ロットは記録していない |
| F3 | 作業手順にはテープを貼る位置の図がある。押さえ方の説明はない |
| F4 | 箱ごとの作業時刻、作業者、使用器具、作業場所の温湿度は記録していない |
| H1 | 担当者の候補:押さえ方に違いがあった可能性 |
| H2 | 担当者の候補:材料の保管状態に違いがあった可能性 |
Fは記録上の事実、Hは人が挙げた仮説です。F3の「説明がない」は事実でも、それが浮きを起こしたとはまだ言えません。また、F2から「材料の影響はない」とも判断できません。同じ種類でも、ロットや保管状態まで同一だと確認したわけではないためです。
実務の資料を使う際は、会社が認めたAI環境と入力範囲を確認します。顧客名や製品名を記号に置き換えただけで、品質情報を入力してよいとは限りません。初回の練習は、この架空例だけで進められます。
4Mの候補表を作るプロンプト
先に関係者が候補を挙げ、その後でAIに分類と追加候補を頼みます。AIの一覧に合わせて現場の意見を出す流れにすると、最初の分類から外れた気付きを拾いにくくなるためです。
次の指示と、上のF1〜F4・H1〜H2を新しいチャットへまとめて入力します。
架空の梱包作業について、特性要因図の下書きを作ります。
特性は「梱包後の確認で封かんの浮きが見つかった」です。
入力するFは記録上の事実、Hは担当者が挙げた仮説です。
1. Hの仮説を、人・設備・材料・方法の観点へ分類してください。
2. 各行に候補ID、大骨、具体的な候補、関連するFのID、
候補の出所、現場で確かめる質問を付けてください。
3. 追加の観点があれば最大2件、Aから始まるIDで別表に出してください。
出所は「AIが追加した仮説」とし、入力事実とは分けてください。
4. 根拠のない作業者の性格・能力・不注意を原因にしないでください。
5. Fに書かれた記録不足を、異常が発生した証拠にしないでください。
6. 分類できない候補や複数分類に関係する候補は、その理由を残してください。
7. 候補の数を4Mで均等にせず、原因の確定、発生確率、
改善効果の数値、設備設定の変更指示は出さないでください。
材料:
(F1〜F4、H1〜H2をここに貼る)
追加を2件に絞るのは、練習で読み合わせる量を抑えるためです。2件確認すれば、要因を十分に調べられたという意味ではありません。
候補表を読んでから、特性要因図へ配置する
下表は照合用に編集部が作った例です。特定のAI製品が実際に返した回答ではありません。
| 候補ID・出所 | 大骨と候補 | 材料との関係・確認すること |
|---|---|---|
| H1・担当者 | 方法:押さえ方の違い | F3では説明がない。実際の作業と、製品の指定手順を担当者が確認する |
| H2・担当者 | 材料:保管状態の違い | F2ではロットが不明。保管場所や払出記録を追えるか確認する |
| A1・AI追加仮説の例 | 設備:使用器具の状態の違い | F4では器具が不明。器具を使った工程かどうかから確認する |
| A2・AI追加仮説の例 | 人:交代時の作業説明の違い | F4では作業者が不明。そもそも交代があったかを確認する |
A1とA2は入力から分かった事実ではありません。器具を使わない作業ならA1は対象外になります。交代がなかったと確認できれば、A2の仮説も今回の説明としては外せます。空欄があるから異常が起きた、と読み替えないことがポイントです。
内容を照合したら、紙や社内で使っている作図ソフトに配置します。
- 右端に今回の特性を書き、そこへ向かう横線を引く。
- 横線へ、人・設備・材料・方法の大骨をつなぐ。
- 大骨から小さな枝を出し、H1などのIDと短い候補名を載せる。
- AIが追加した枝は「AI仮説」と明記する。
- 元の候補表を図と一緒に保存し、根拠や質問をIDでたどれるようにする。
たとえば「方法」の枝には「H1 押さえ方の違い」を置き、その近くに関連事実として「F3 押さえ方の説明なし」を添えます。F3を添えただけでは、因果関係が証明されたことにはなりません。
同じ候補を複数の枝へ置く場合は同じIDを使い、「別の原因が二つ見つかった」と数えないようにします。枝が長くなるときは、候補名だけを図へ載せ、確認質問は表に残すと読み合わせやすくなります。
現場確認では、候補を支持しない記録も残す
図ができたら、確認できる資料、確認担当、実施日を候補表へ加えます。調べる順番は、影響の大きさや確認可能な記録をもとに現場の責任者が決めます。AIの並び順を、そのまま対策の優先順にしないでください。
今回なら、浮きがあった3箱だけでなく、浮きが見つからなかった17箱との違いも確認対象になります。ただし、箱ごとの記録がない項目は過去へさかのぼって断定できません。「分からない」と残し、次の観察で何を記録するかを決めます。
| 確認後の状態 | 残す内容 |
|---|---|
| 候補を支持する材料がある | 何を、どの記録や観察で確認したか。ほかの説明が残っていないか |
| 候補と矛盾する材料がある | 合わなかった記録と、今回の図から外す理由 |
| 判断できない | 足りない資料と、次に確認できること |
問題がなかった箱にも同じ条件が見られる場合、その条件だけで発生を説明できるかを見直します。反対に、今回見つからなかった条件を、将来も影響しないものとは決めません。
設備条件や材料の変更を試す場合は、既存の品質・安全管理手順に従い、責任者が試験の範囲を決めます。この記事の候補表は、製造条件の変更や出荷可否を指示する資料ではありません。
製造業のAI研修では、図の修正まで試す
研修で使うなら、最初の図を作った後に、「作業交代はなかったと確認できた」などの追加条件を講師が渡し、どの枝を修正するか試す方法があります。その条件は演習用の追加設定だと明記してください。
見るのは、図の見栄えや枝の多さだけではありません。HとAの区別が残るか、追加条件に合わない候補を取り下げられるか、確認していない原因を断定しないかを読み合わせます。
日々の記録が整理されていない場合は、先に品質検査・不良記録の整理から始めると、分析に使える材料を確認できます。入力範囲と確認者の決め方は、AI活用ルールで扱っています。
福島県内で研修や導入支援を検討する方は、コミットメントのAI活用支援へ、現在の改善活動で困っている作業をお伝えください。初回は実際の不良情報を送らず、「原因候補を整理する演習をしたい」といった相談内容で構いません。
特性要因図と生成AIについてよくある質問
AIに図まで描かせる必要がありますか?
最初は候補表で十分です。根拠と質問を確認した後、社内の様式に合わせて配置します。図の出力方法は利用環境によって異なるため、この記事では特定の製品による描画機能を前提にしていません。
4Mの欄が埋まらないと不十分ですか?
空欄だけで不十分とは判断しません。「その観点をまだ調べていない」のか、「調べた結果、今回に関係する候補がなかった」のかを分けて記録します。見た目をそろえるための候補追加は避けます。
なぜなぜ分析と、どちらを先に行いますか?
この記事の手順では、まず特性要因図で候補を広げ、確認する範囲をそろえます。その後、調べる候補について理由のつながりを追います。途中で別の要因が見つかったら、元の図へ戻して構いません。どちらも、現場の確認なしに原因を確定するものではありません。
まとめ
生成AIで特性要因図を作るときは、対象となる結果を具体的にし、事実・担当者の候補・AIの追加仮説を分けます。4Mへ分類した後も候補IDを残し、現場で確かめる質問と結び付けてください。
まずは架空の20箱の例で、候補表を作って読み合わせるところから試しましょう。確認結果に応じて枝を直せることが、実務で使うための一歩になります。